ここがよかった駐在員
前回の記事で描いていたキラキラ駐在員生活を打ち砕く現実を少し書きましたが、今回はよかったことも具体的に。
1.トラブルは日常
日本:
・影響の大小に関わらずとにかく業務は一時中断!全員会議室に集合!
・事象や影響範囲、復旧時限をまず確認!設計書をみんなに共有!
・原因究明!なぜなぜ分析!再発防止策!
思い出すだけでイヤになりますが、多分日本のシステム保守に係る人はきっと体験しているだろうと思います。
・え?トラブル?今からランチタイムだから後でね!
・設計書を確認したいって?そんなものないよ!実機をみれば全部わかるよね!
・ほら!ここのモジュールが起動しなくなってる!サーバ再起動するね!
・再発防止策?解消したんだからもういいだろう。知らん。
おおざっぱに言うとこんな感じ。良く言えば大らか、悪く言えば無責任ですが、被害にあっているユーザもそこまで急いでいる人がいない場合もあり、全体的にのほほんとしている印象。日常的にトラブルが発生しますが、日本のようにトラブル報告で必要以上に時間をとられることはありません。ローカルスタッフは少数精鋭のスペシャリストなこともあり、設計書はなくても実機上で大体のアタリをつけ、いちいち会議室であーだこーだ話し合うこともなく短時間でトラブルを解消させることがほとんどです。
日本がダメで海外は良いと言うつもりはまったくありませんが、生産性は段違いです。日本式の再発防止策はそのトラブルの原因自体がいろいろな要素が絡んでいることもあり汎用的な再発防止策というのは往々にしてなく、結果として次回に活かされることはありません。
こうした対応の違いは国民性や文化の違いも関わっていることで、良し悪しはありますが非常に興味深いところ。日本式に慣れていた私は目から鱗でした。とはいえ大きなトラブルのときは日本の本社から状況どうなってる!?と詰められるのは我々駐在員なこともあり、どこまでローカルの裁量に任せるか匙加減が難しく、今も悩みどころです。
2.とにかく合理的
1つ目に通じることでもありますが、シンガポリアンはとにかく合理主義です。多民族国家であり、人口構成は中華系70%、マレー系20%、インド系10%。英語が共通言語となっていますが、それぞれの家庭では人種によって母国の言葉が教えられるため2か国語話せるのが当たり前。文化・風習・考え方・宗教観が異なるので共通項がほとんどありません。共通項といえば業務で目の前に転がる「課題」であり、それに集中します。誰が見ても納得性の高い理屈・理論が正義であり、その課題を解決するために議論の時間を惜しみません。当然上司(評価者)と部下(被評価者)の関係から部下が空気を読むこともありますが、より合理性のある案があれば物怖じせず主張します。
打ち合わせではそうした彼らに圧倒されることも多く、ummm, I'm okay, no more comment from me. などと言って引っ込んでしまいがちですが、それだと自分の価値が発揮できなくあとで後悔します。なので、意志を強く持ち言いたいことはなるべく言うのが大事。
シンガポールに限らず多民族国家では同じような気がしますが、共有できることが「課題」しかないため一直線にその解消に向かえる。それが彼らの強さの源泉なんでしょうか。無駄なことは一切しないというのは生産性も高く、中身のある仕事ができる率が日本時代よりも高いのは駐在していてよかったと思うことの1つです。
続きはまた次回。
*F*I*N*