駐在員オオハッカのシンガポール雑記

メーカー系IT企業のシンガポール駐在員。35歳。駐在経験をメインに、キャリア・仕事とプライベートの考え方・ノウハウの共有を目的としています。

ここがよかった駐在員

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シンガポールの夜景

前回の記事で描いていたキラキラ駐在員生活を打ち砕く現実を少し書きましたが、今回はよかったことも具体的に。

 

 1.トラブルは日常

 日本:

・影響の大小に関わらずとにかく業務は一時中断!全員会議室に集合!

・事象や影響範囲、復旧時限をまず確認!設計書をみんなに共有!

・原因究明!なぜなぜ分析!再発防止策!

 

思い出すだけでイヤになりますが、多分日本のシステム保守に係る人はきっと体験しているだろうと思います。

 

 シンガポール

・え?トラブル?今からランチタイムだから後でね!

・設計書を確認したいって?そんなものないよ!実機をみれば全部わかるよね!

・ほら!ここのモジュールが起動しなくなってる!サーバ再起動するね!

・再発防止策?解消したんだからもういいだろう。知らん。

 

おおざっぱに言うとこんな感じ。良く言えば大らか、悪く言えば無責任ですが、被害にあっているユーザもそこまで急いでいる人がいない場合もあり、全体的にのほほんとしている印象。日常的にトラブルが発生しますが、日本のようにトラブル報告で必要以上に時間をとられることはありません。ローカルスタッフは少数精鋭のスペシャリストなこともあり、設計書はなくても実機上で大体のアタリをつけ、いちいち会議室であーだこーだ話し合うこともなく短時間でトラブルを解消させることがほとんどです。

 

日本がダメで海外は良いと言うつもりはまったくありませんが、生産性は段違いです。日本式の再発防止策はそのトラブルの原因自体がいろいろな要素が絡んでいることもあり汎用的な再発防止策というのは往々にしてなく、結果として次回に活かされることはありません。

 

こうした対応の違いは国民性や文化の違いも関わっていることで、良し悪しはありますが非常に興味深いところ。日本式に慣れていた私は目から鱗でした。とはいえ大きなトラブルのときは日本の本社から状況どうなってる!?と詰められるのは我々駐在員なこともあり、どこまでローカルの裁量に任せるか匙加減が難しく、今も悩みどころです。

 

 

2.とにかく合理的

 1つ目に通じることでもありますが、シンガポリアンはとにかく合理主義です。多民族国家であり、人口構成は中華系70%、マレー系20%、インド系10%。英語が共通言語となっていますが、それぞれの家庭では人種によって母国の言葉が教えられるため2か国語話せるのが当たり前。文化・風習・考え方・宗教観が異なるので共通項がほとんどありません。共通項といえば業務で目の前に転がる「課題」であり、それに集中します。誰が見ても納得性の高い理屈・理論が正義であり、その課題を解決するために議論の時間を惜しみません。当然上司(評価者)と部下(被評価者)の関係から部下が空気を読むこともありますが、より合理性のある案があれば物怖じせず主張します。

 

打ち合わせではそうした彼らに圧倒されることも多く、ummm, I'm okay, no more comment from me. などと言って引っ込んでしまいがちですが、それだと自分の価値が発揮できなくあとで後悔します。なので、意志を強く持ち言いたいことはなるべく言うのが大事。

 

シンガポールに限らず多民族国家では同じような気がしますが、共有できることが「課題」しかないため一直線にその解消に向かえる。それが彼らの強さの源泉なんでしょうか。無駄なことは一切しないというのは生産性も高く、中身のある仕事ができる率が日本時代よりも高いのは駐在していてよかったと思うことの1つです。

 

続きはまた次回。

 

*F*I*N*

 

「海外駐在員」ってなにしてるの?

 海外駐在員を1つの目標に20代の会社員生活を送っていました。最初の配属先が海外系システムを開発する部署だったこともあり、それまで海外に縁のなかった私は「グローバルに活躍」というなんだかカッコいいフレーズに酔いしれ、気づけば「海外赴任させてほしい」と念仏のようにひたすら上司や人事部との面談で訴え続けていました。

 

 「海外に行けば何かが変わるんだ」と信じ続けた私は、自分でいうのもなんですがそれなりの成果も残してきました。ハードな日程の海外出張をこなし、休日夜間も必要あれば仕事に打ち込みました。そうして気づけば30代になった私はある日上司から呼び出されました。「おめでとう」と言いながらニヤニヤしている上司。「え?」と聞き返すと「前から希望出してただろ?明日9時に人事部長のところへいってこい」とのこと。後日人事部長のもとへいくと、正式にシンガポール駐在の内示発令をもらいました。ついにこの日が来たか、という思い。「全力でがんばります!」と元気に返事をし、胸を張って人事部長の部屋をあとにしました。

 

 その後、内示のことを聞いた周囲からの羨望の眼差し、自分がグローバル人材になれたという誇り・認められたという自負、これまでの苦労が報われたんだという思いも相まって、鼻が高くなっていたのは事実。当たり前ですよね、大量にいる海外赴任希望者の中から私が選ばれんです。ちょっとくらい自慢してもバチはあたらないはず。赴任のためにばたばたと身辺整理をし、201712()に満を持してシンガポールへ赴任しました。

 

※年を越さない内に赴任する人が多いのは住民税が関係しています。住民税は11日に住所が日本国内にあると課税される仕組みなので、1231日までに国外へ住所を移しておけば翌年の住民税がかからないというカラクリ。

 

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晴れて正式に海外駐在員というポジションについた私を待っていたのは地獄でした。

 

・ローカルスタッフの多くは仕事をしたがらない。拒否る。トラブルが起こっても自分は悪くないの一点張り。最後の尻拭いは駐在員。なんでも屋。残業すごい。

 

・日本からの問い合わせ対応で1日が終わる。物理的に距離が離れただけでこれまで付き合いのあった部署の人たちが妙に冷たかったり返信が遅いのはなぜ?

 

・他の駐在員との濃密な関係性。休日も頻繁に会う。日本国内以上の超絶ムラ社会。どれだけバーベキューが好きなんだ?

 

・食べ物が身体に合わない。ずっと腹を下す。体調を崩しやすくなった。仕事中につらくなり早退して病院で点滴を打ったことも。

 

・とにかく暑い。その割に室内は猛烈なクーラーで気温の落差がすごい。なのにローカルスタッフは半袖やノースリーブで平然としている。「なんであなたはそんなに着込んでるの?」と不思議そうな顔で聞いてくる。黙れ。

 

コーヒー片手に優雅に出社、ホワイトボードの前で英語で談笑を交えながらディスカッション、といったキラキラした環境を想像していた私は直面した現実に打ちのめされました。

 

海外で駐在員としてキラキラした生活を夢見ている人たちにはすべてとは言いませんが、こうした現実があることも知ってほしいとおもいます。

 

マイナスな事ばかり書きましたが楽しいこともあります。それはまた次回。

 

*F*I*N*